改めて「換気」について考えています。
更新日:コラム
新型コロナウイルスによる、4月16日の緊急事態宣言発令から1ヶ月強、
京都を含む関西地域でも5月21日に解除され、いよいよ5月25日には全面解除となりました。
私たちビルド・ワークスでも、在宅勤務から通常勤務に戻り、
少しずつ以前の事務所風景が戻ってきています。
私どもの場合、元々スタッフの約半分は現場監督で、多くの時間現場に出ているため、
事務所内はそこまで密な状態ではないのですが、
1カ所しかない大きな窓を開け、換気扇も同時に回すことで、換気に気を付けています。
新型コロナウイルスの感染経路は、
・飛沫感染
・接触感染
と言われ、空気感染に関しては、まだ正確な情報が少ないようですが、
咳やくしゃみによって空気中に飛び散った飛沫が「エアロゾル」として、
長時間空気中に残ることもあるようで、やはり換気は大切になるようです。
一番簡単で効果的な換気方法は、「窓を開ける」こと。出来れば2カ所の窓を。
今の時期は、窓を開けると本当に気持ち良く、
下鴨神社に隣接する私たちの事務所も窓を開けて気持ちよく仕事をしています。
しかし、既に目の前には蒸し蒸しする梅雨と暑い夏、
PM2.5や黄砂等の大気汚染、花粉等によるアレルギーや、
大通り沿いの場合は排気ガスの問題や、騒音の問題もあり、
なかなか窓を開けての換気が出来ず、機械の換気扇(や換気システム)に頼るケースが多いと思います。
何となく換気扇を回すだけで、どんどん室内の空気がキレイになるように感じますが、
室内の空気を換気扇で外に出す(排出する)ということは、
基本的には同じ量の空気を外から取り込むということになります。
この外の空気を取り込むところを「給気口」といい、
よくお部屋の壁などに穴のあいたフタのようなものが付いていると思います。
こうして「換気扇」の力で、室内の空気を排出し、外の空気を「給気口」から取り込むことで、
室内の汚れた空気が「換気」されていくのですが、
給気口からは外の空気がダイレクトに入ってきますので、
出来ればフィルターが付いている給気口がより良いと思います。
またこの給気口は、室内の中で、換気扇から遠いところにある方が効果的です。
たまに換気扇を回しながら、換気扇のすぐ下にある窓を開けているケースを見ますが、
この場合、換気扇は開いた窓から外の空気を吸って、そのまま外に排出するという、
いわゆる「ショートサーキット」を起こしてしまい、
余り効率的に室内の空気を換気することができなくなってしまいます。
換気の仕組みを分かっていると、上記のようなケースはイメージし易い話しなのですが、
最新の住宅でも、しっかり「気密性」の高い施工がされていない住宅では、
どんなに高性能な換気システムを設置していても、気密性の悪い部分(隙間)から空気を吸ってしまい、
この場合、換気扇に近い隙間からより多くの空気を吸い込んでしまうため、
換気扇から遠い部屋の空気を計画通りに換気出来ず、予期せぬところで、
上記のような「ショートサーキット」状態が起きてしまうことになります。
また計画された「給気口」には一般的には「フィルター」が付いているため、
排気ガスや汚れた空気などもフィルターを通って室内に取り込むことができるのですが、
予期せぬ「隙間」にはフィルターがないので、折角高性能な換気システムと、フィルターを導入していても、
ダイレクトに外気を取り込んでしまうことになってしまいます。
私たちビルド・ワークスでは、もう何年も前から、
施工途中にこの隙間を専用の機械で測定し(気密測定)、
その隙間が限りなく0に近い、「C値=0.3cm2/m2」以下をクリアさせてから、
施工を進めています。
またこれからは、家族が感染症などにかかってしまった場合でも、
感染者の暮らす部屋と非感染者の暮らす部屋の空気が行き来しないような、
換気計画にまで踏み込んで計画する必要性を感じています。
出来れば、広々とした空気の綺麗な敷地で、年中エアコンに頼ることなく、
自然とともに暮らしていきたい、そんな家を設計したいと夢見ていますが、
この先も予想される酷暑や日本の湿度、ある程度都市部で暮らすことでの、大気汚染や騒音を考えると、
しっかりと現実と向き合いながら、そんな中でも快適で健康に暮らせる建築を生み出していかなければいけないと感じています。
BUILD WORKs
設計部 河嶋